橘 葉月 日本, 2000

橘葉月の作品は美しい。

一見すると日本の伝統的な墨絵のようにも見える彼女の作品は、全てキャンバスに油絵具とアクリル絵具で描かれています。

作家は自らに関心のあるテーマを探して、それに取り組みます。

絵を描くことで、自分と世界の関係を調整することを願っているのが、多くの作品制作者の気持ちでしょう。

橘葉月は、どのようにこの世の中に存在してゆくべきかといった問題を、自分にとって切実なものとして捉える年頃にいます。

自分への関心がとても強く、自分の中にあるものを吐き出したいとか表現したいという気持ちだけで制作された作品は、外見は強いように見えてもすぐに魅力が失せてゆきます。

観る人に訴える力に限界が出てきて、作品が評価される期間も短いものとなるからです。

強すぎる自己愛の克服が芸術家にとっても、大事な事となります。

古今の優れた芸術家に共通する特徴は他への関心です。

そしてこの世界がどのようにできていて、自分の位置はどこかにあるのかを絶えず確認しようとする態度です。

橘葉月さんが芸大を卒業するに際して設定したテーマが、どうしたら他者と認識を共有できるかという、他者と世界への強い関心であったということを、私たちは記憶しておくべきでしょう。

そのような強い関心を背景に生まれ出てきた、同一人物にも見える顔が大きいものから小さいものに、一つの画面に順番にリズムを感じさせて描かれている作品からは、不思議で特別な感覚を得ることができます。

何故かわからないけれど、忘れられない不思議な魅力があると感じられるとき、その作品は既に観る人の人生の一コマを創ったと言えるでしょう。

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